難病映画に込められた願い
衆院が解散され、何かと気ぜわしい世の中です。こんな時こそ、ゆっくり映画でも……というと昼夜、選挙取材で忙しい私の職場では、やや「浮いた」発言になってしまいますが、社会部に届いた、ある映画案内が気になっていて、監督から郵送していただいたDVDを鑑賞しました。
タイトルは「奇跡の子どもたち」。体も動かせず、言葉も話せない「芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症」という難病の3人の子どもを10年、記録したドキュメンタリーです。国内の患者は10人程度という病です。
監督は、テレビ番組の制作を手がける稲塚秀孝さん(67)。東京の知人の子が生まれつき、この難病で、「伝えなければ、知られることはない。治療の後押しに」と記録を始めます。同じ病の子ども2人のいる山形県の家族も撮影に応じました。
頻繁に起こる発作、そのたびに管を口に入れ、吸引する家族。自力で食べられず、胃に穴を開けて栄養を送る「胃ろう」。2家族の日常は壮絶です。わが子を介護する山形県の母親が「子どもが悪いわけじゃない」とつぶやく姿が胸に刺さりました。
ずっと効果的な治療法はなかったのですが、カメラは2015年、「奇跡」を目撃します。大学病院での臨床研究が功を奏し、発作が治まり、食事や歩行器を使った歩行ができるようになったのです。ラストシーンは、未来に希望を持つことができた3人の子どもと家族の笑顔でした。
さて。今春完成した、この映画は各地で自主上映会が開かれるようになり、大阪でも今月9日午後2時(開場)、大阪市中央区民センターで上映されることになりました。
面識のない稲塚さんに「ぜひ上映会を」と伝え、企画したのは、大阪市の鈴木繁さん(63)。建築事務所を経営していた43歳の時、難病の「多発性硬化症」を発症し、一時、体が動かせないまでになって、廃業しました。
また鈴木さんには、腎臓が悪く、透析治療を続けていた次男(34)がいて、「健康な体に育ててあげられなかった」と眠れぬほど苦しんだ経験が、映画に登場する家族と共通していました。
国が指定する難病は、330ありますが、どれもあまり知られていません。鈴木さんは「難病について、一人でも多くの人に知ってもらうことが、患者や家族を孤独から救います。映画の子どもの笑顔に、私は力をもらいました。多くの人にも希望の光が差してほしい」と話されました。
様々な人と思いが集まって、実現する上映会です。定員は150人。チケットなどに関する問い合わせは、鈴木さん(090・3657・2151)までどうぞ。
飯島 愛 ちん ガッタス・オスピタル
よちよちぶらぶらチ~ン

0コメント